エンジンリアルタイム計測システム
Real-time Measurement System
相澤研では, 実際の自動車メーカーの開発現場にも劣らないエンジンのリアルタイム計測システムを完備しています.これらのシステムを含めた単気筒エンジンベンチは相澤研の学生が主体となって構築したものです.運用,保守,管理も全て教員ではなく相澤研の学生のみで行われております.この様な大きな設備を学生が自由に扱う事が出来る研究室は,他国公立大学を含めても非常に珍しく,貴重な経験になる事は間違いないでしょう.
実験装置
定容燃焼器
Constant Volume Conbustion Vessel
すす粒子生成メカニズム解明や熱効率改善のためには実際にエンジン筒内で起こっている現象を可視化しなくてはなりません.しかし,ピストン等の複雑な機構を有するエンジンでそれは容易ではありません.この定容燃焼器は実エンジン筒内の温度や圧力条件を模擬しつつ,可視化するための大きな窓を有した,観察に適した装置となっております.相澤研ではこの燃焼器を光学計測や電子顕微鏡解析のためのサンプリング実験など,様々な用途で使用しています.
実エンジン形状模擬燃焼器
Constant Volume Conbustion Vessel (2)
基本的には上述の燃焼器と同様の用途で用いられますが,決定的な違いとしてその形状があります.当然ですが温度,圧力のみではなく,空気流動や噴霧間干渉,壁面衝突も燃焼に大きく影響を与えます.実エンジンのように動くピストンではありませんが,筒内の形状を模擬し,より実機に近い燃焼を再現し,燃焼を評価する装置となっています.
ガソリン単気筒光学試験エンジン
Single Cylinder Optical Test Engine for GDI engine
直噴ガソリン機関におけるすす生成過程など,筒内現象を解明すべく,実エンジンに近い条件での実験を可能とした単気筒試験エンジン.ヘッド及びピストンに取り付けられた光学サファイア窓を通して,相澤研で確立している様々な最先端光計測技術を適用することが可能となっています.また,窓の代わりにヘッドにガス捕集装置を取り付けることで,運転時の任意のタイミングにおける,すすを含めた筒内全量ガスサンプリングも可能となっています.
計測器
赤外線高速度カメラ(TELOPS FAST-IR M3k)
High-Speed IR Camera
この赤外線高速度カメラを用いると,人間の目では全く判らないわずか1/1000秒の間に一瞬で終わってしまうような高速な温度変化を,スローモーション動画として撮影することが可能になります.相澤研ではこの赤外線高速度カメラを用いて,自動車用エンジンの燃焼室の内壁から熱エネルギーが一瞬のうちに外部へ流出する様子を,世界で初めて画像として捉えることに成功しました.
高速度カメラ(GX-1)
High-Speed Camera
相澤研が主な対象としているディーゼル燃焼はわずか数msで終わってしまう非常に短い現象です.その短い現象を詳細に追うためにはこれよりもさらに短いシャッタースピードを有するカメラで撮影する必要があります.MEMRECAM GX-1(nac)は毎秒数万コマかつ高解像度で撮影が可能な高速度カメラです.本カメラを使用し,火炎温度やすす粒子の濃度分布などを時系列で撮影,解析しています.
高速度カメラ(HX-5)
High-Speed Camera
大まかな仕様はGX-1と同様ですが,MEMRECAM HX-5(nac)ではGX-1よりもさらに高速かつ高解像度で撮影が可能となります.現在相澤研では火炎内化学種の自発光など,比較的弱い光を高解像度で撮影するために本カメラを使用しています.
超高感度カメラ(iStar)
Intensified Camera
iStar(Andor)は上記二つのカメラとは異なり連続写真は撮れませんが,微弱な光をCCDにより増幅し,高感度で撮影します.高出力レーザにより励起された化学種の蛍光やすす粒子からの赤熱光などの微弱な光を撮影するのに使用しています.
高機能分光器(MS2004i)
Spectroscope
分光器MS2004(SOL instruments)は入射された光を波長ごとに分け,何色の光がどの程度入っているのかを評価します.
燃焼場には様々な化学種が生成され,それらはそれぞれ特有の波長の光を自発光として出しています.火炎から放出される光を分光器に入射することで,燃焼場でどの化学種がどのタイミングで生成されているのかを特定するのに使用しています.
レーザ
連続発振半導体レーザ(460 nm)
Continuous Semiconductor Laser
レーザポインタなどと同様,連続発振の半導体レーザ(460 nm)です.主にディーゼル噴霧火炎中のすす粒子の影写真(すす濃度分布可視化用)を撮影するために使用します.ディーゼル火炎中で生成されるすす粒子中を透過させるためには比較的高出力のレーザ光を必要としますが,本レーザは最高出力2W(レーザポインタ2,000本分)となっており,すす粒子生成挙動の観察にも適しています.
連続発振半導体レーザ(445 nm)
Continuous Semiconductor Laser
上記の半導体レーザと同程度のスペック(中心波長445 nm,最大出力1.5 W)を有する連続発振レーザですが,冷却装置などの外部装置を必要とせず,可搬性に優れたレーザとなっております.現在,相澤研では本居室(4209)の他にハイテクリサーチセンター(H-11),5号館(5106)の2部屋でも装置を所有し,実験を行っています.これら3部屋の装置で可搬性に優れた本レーザを共有し,火炎中のすす粒子の挙動を観察・評価しています.
高出力パルスレーザ(Nd:YAG)
High-power Pulsed Laser
上二つのレーザとは異なり,10 Hzでレーザ光を出力するパルスレーザです.脱毛など,医療にも広く利用されているレーザです.出力波長は1064 nm, 532 nm, 355 nm, 266 nmの4種類です.主にすす粒子生成に関与しているとされる燃焼生成化学種を励起現象により可視化するために使用されます.この励起現象には特定波長かつ高エネルギーのレーザ光が必要であり,多波長かつ高出力を得られる本レーザが適しています.出力としては1パルス当たり1 J,ワット数に換算すると100 MWとなります.
波長可変レーザ(TII)
Tunable Solid State Laser
高出力パルスレーザのところでも述べたように化学種の励起には特定の波長が必要であり,化学種によっては上記の4種類では不十分なこともあります.上記のパルスレーザ光を本装置内のチタンサファイア結晶に入射させることで波長の変換が可能となります.高出力パルスレーザと本装置を組み合わせて使用することにより,より多くの燃焼生成化学種の可視化が可能となります.
高周波パルスレーザ
High-Repetition Pulsed Laser
上記のパルスレーザが10 Hzであるのに対し,本レーザでは最大7,000 Hzでのレーザ出力が可能となります.ディーゼル燃焼のようにわずか数msで終わってしまう現象中での化学種の挙動などを時系列で観察したい際に使用します.