2014年度~2018年度
SIP 戦略的イノベーション創造プログラム~革新的燃焼技術~(国家プロジェクト)
その他の研究
光学計測によるディーゼル噴霧火炎内すす粒子生成・酸化過程の調査
LII/LS法を用いたディーゼル噴霧火炎内すす粒子性状の瞬時計測
ディーゼル機関から排出されるすす粒子を低減する上で,燃焼中のすす粒子が火炎中の「いつ」「どこで」「どんな大きさ・数濃度」で分布しているのかを知ることが大切です.LII/LS法は高出力パルスレーザを用いてこれらの情報を瞬時計測できる有効な手法の一つです.
LII/LS法とは:
レーザ誘起赤熱法(LII: Laser Induced Incandescence): 高出力のレーザ光により照射されたすす粒子が加熱され,輻射光を出します.この輻射光強度はすす粒子の質量M,つまり体積D^3及び数密度Nに比例します.高感度カメラでこれらの信号を計測することで火炎内すす粒子濃度を定性的に可視化することができます.
レーザ散乱法(LS: Laser Scattering): 照射されたレーザ光がすす粒子表面で散乱されます.この散乱光強度は数密度Nと粒子径Dの6乗に比例します.LII法と同じく高感度カメラで撮影することで火炎内すす粒子濃度を可視化することができます.
これら2つの信号値を同時に計測し,得られた画像を除算等の処理をすることですす粒子の火炎中での大きさDや数密度Nの定性的な分布を可視化することができます.

図1. LII/LS法の光学系セットアップ

図2. LII/LS法の計測原理
図3はLII/LS法により可視化されたディーゼル噴霧火炎内すす粒子の濃度(上段),粒子径(中段),数密度(下段)です.異なる雰囲気酸素濃度(左:21%,右:15%)でこ計測を行っており,すす生成・酸化過程に大きな影響を与える酸素の濃度によってこれらの分布がどのように異なるかがわかります.
また,図4ではこれらの光学計測により得られた定性的な粒径を,電子顕微鏡により取得した定量的なすす粒子の大きさである要素すす粒径及び凝集体旋回半径(詳しくはTEMを用いた計測)と比較した結果を示します.これにより,光学計測で得られるディーゼル噴霧火炎内すす粒子の大きさは要素すす粒径よりも凝集体の大きさに比例しているということが世界で始めて実験的に示されました.

図3. ディーゼル噴霧火炎内すす粒子の濃度・粒径・数密度分布

図4. LII/LS法により得られた粒径とTEMによるすす粒子の大きさの比較
関連文献
M.Kuribayashi, Y.Mizutani, Y.Ishizuka and N.Taki
"Effects of Ambient Oxygen Concentration on Soot Processes in Diesel Spray Flame -A Qualitative Comparison between TEM Analysis and LII/Scattering Laser Measurements-"
SAE International Journal of Fuels and Lubricants, Vol.7(3), pp.693-703
M.Kuribayashi, Y.Ishizuka and T.Aizawa
"Sizing of Soot Particles in Diesel Spray Flame -A Qualitative Comparison between TEM Analysis and LII/Scattering Laser Measurements-"
SAE International Journal of Fuels and Lubricants, Vol.6(3), pp.641-650